日本を代表する「お蕎麦」は、多くの日本人に親しまれている食べ物ですが、“蕎麦の実”というと意外にも馴染みが少なくって、どうやって食べるのだろう?とも思いませんか?
そんな蕎麦の実は、欧米を中心に今や海外では、とても栄養豊富な“ダイエットスーパーフード”として人気のある一食材です。
今回は、
- 蕎麦の実って何?
- 意外と知られていない蕎麦の実の種類とは
- 蕎麦の実が持つ栄養素
- なぜスーパーフード?その美容健康効果とは?
について、ご紹介していきたいと思います。
この記事の目次
蕎麦の実とは
蕎麦の実とは、蕎麦の殻つきの種子のことで、日本蕎麦などを作る「そば粉」の原料となる実のことです。
食用には、その蕎麦の実を脱穀したものが使われ、それを挽いたものが一般的なそば粉です。
脱穀(脱皮)せず、殻つきの蕎麦の実を全粒粉にする場合もあります。
実は「キヌア」「アマランサス」と同じ?
蕎麦は、ダテ科ソバ属の一年草です。蕎麦などのイネ科以外の穀類には、アカザ科のキヌアや、ヒユ科のアマランサスがありますが、これらは擬穀類と呼ばれています。
蕎麦の実は、欧米では、モデルさんや女優さん、アスリート、オーガニックな生活を好んでいる方たちにとても人気があり、スーパーフードとして愛用されています。蕎麦の実を使った歴史のある健康食としては、ロシアの『カーシャ』と呼ばれる“そば粥”や、フランスのブルターニュ地方の『そばクレープ』などが有名です。
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蕎麦の実の種類
蕎麦の実は大きく3種類!
ソバの実は、
- ① 普通種の普通蕎麦(フツウソバ)
- ② ダッタン種の韃靼蕎麦(ダッタンソバ)
- ③ 宿根種の宿根蕎麦(シュッコンソバ)
の3種類にわけられます。
この中で、食用とされるのは、① 普通蕎麦と ② 韃靼蕎麦 の2種類だけで、宿根蕎麦は収穫量も少なく食用としても普及されていません。
日本ソバは普通ソバ
そして、普段私たちがよく食べている「日本蕎麦」は、①の普通蕎麦にあたります。
②の韃靼蕎麦は、別名『苦蕎麦』とも呼ばれ、中国などでは、乾麺やパンのほか、蕎麦茶として飲まれていたり、味噌・醤油・酢・酒などの発酵食品や醸造食品に利用されたり、医薬品にも利用されています。
韃靼蕎麦は普通蕎麦の100倍以上のルチンを含んでいると言われており、健康食材として見てみると、普通蕎麦よりも韃靼蕎麦の方が栄養価が突出していると言えます。
十割、二八ソバの意味
また、蕎麦に使用される“十割”や“二八”という言葉ですが、これは蕎麦に含まれるそば粉の含有率を表した呼び方になります。十割蕎麦ならば、つなぎを使用せずに、そば粉100%で麺を打っています。二八蕎麦などは、つなぎ(小麦)を2割、そば粉を8割の割り合いで作られます。
蕎麦の実は丸ごと摂ろう!
米や小麦は胚芽部分を取り除いて胚乳部だけを食品として使いますが、蕎麦の場合は、栄養豊富な胚芽部分が実の中心部にあるため取り除くことができません。そして、皮下の甘皮の部分にも栄養素が多く、精製せずに作る蕎麦の実には、栄養素がぎっしり詰まっています。
近年の蕎麦ブームにより、蕎麦の実を殻付きのまま丸ごと摂取したい方がたくさんいます。
蕎麦に限ったことではなく、穀類の多くには実の中心よりも外側に栄養価、香り、旨味と言ったものが豊かになっているので、脱穀していない蕎麦の実をそのまま摂取する方が栄養価の面でも香りや味においても良いということになります。
ただ、玄蕎麦では、殻が固すぎるので、そのまま食べるには一工夫加える必要があります。
玄蕎麦が焦げないようオーブンでローストしたり、油でサクッと揚げたりするのはこの理由によるものです。
また、玄蕎麦をそのまま挽いて全粒粉にしたもの(挽きぐるみ)を摂取するといった方法もあります。
ソバの実の栄養価
【1】 蕎麦粉|全層粉(蕎麦の実)可食部100gあたりの栄養価
全層粉とは、玄蕎麦の外殻を剥いて、甘皮が付いたもの(丸ヌキ)を挽いたもの。
※全層粉は、外殻を付けて挽くか挽かないかは製粉者によって分かれる場合があり、全粒粉と同じ扱いをする場合もあります。
食品成分 |
数値 |
単位 |
---|---|---|
エネルギー |
361 |
kcal |
水分 |
13.5 |
g |
タンパク質 |
12.0 |
g |
脂質 |
3.1 |
g |
炭水化物 |
69.6 |
g |
灰分 |
1.8 |
g |
ナトリウム |
2 |
mg |
カリウム |
410 |
mg |
カルシウム |
17 |
mg |
マグネシウム |
190 |
mg |
リン |
400 |
mg |
鉄 |
2.8 |
mg |
亜鉛 |
2.4 |
mg |
銅 |
0.54 |
mg |
マンガン |
1.09 |
mg |
ビタミンE |
7.3 |
mg |
ビタミンK |
0 |
μg |
ビタミンB1 |
0.46 |
mg |
ビタミンB2 |
0.11 |
mg |
ナイアシン |
4.5 |
mg |
ビタミンB6 |
0.30 |
mg |
ビタミンB12 |
0 |
μg |
葉酸 |
51 |
μg |
パントテン酸 |
1.56 |
mg |
ビタミンC |
0 |
mg |
水溶性食物繊維 |
0.8 |
g |
不溶性食物繊維 |
3.5 |
g |
食物繊維合計 |
4.3 |
g |
【2】 蕎麦の実に含まれる栄養素の特徴
(1)タンパク質量が精白米の30%以上
蕎麦の実はタンパク質を多く含み、精白米と比較しても実に30%以上も多く含まれています。
さらに、蕎麦の実には、レジスタントプロテインという、限られた食品にしか含まれていないとても特別なタンパク質も含まれています。
レジスタントプロテインとは、体内の消化酵素で分解されにくく食物繊維様の生理機能を有するタンパク質のことで、蕎麦の実以外の食品では、酒粕や高野豆腐などにも多く含まれています。
(2)食物繊維
蕎麦の実に含まれる食物繊維は、白米の2.5倍とも言われており、1回の食事で摂取できる量としては、食品中で1番多いものになります。
さらに蕎麦に含まれる食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の割合が1:2というもので、ファイバーバランスとして非常に良質です。
異なる働きがある水溶性・不溶性両方の食物繊維がバランス良く組み合わされることによって、便秘解消やデトックスなどの効果が高まります。
(3)ビタミンB群
蕎麦の実には、ビタミンB群中の6種類のビタミンが含まれています。
中でも、お肌の調子を保ったり、末梢神経の働きを正常化する効果の見込まれるビタミンB1や“発育のビタミン”と呼ばれ健康な肌や毛髪をサポートするビタミンB2が豊富に含まれます。他にも、パントテン酸、ビタミンB6、葉酸、ナイアシンなどを含有します。
(4)リポポリサッカライド
リポポリサッカライド(LPS)とは、免疫力アップに有効な“免疫ビタミン”とも呼ばれる物質です。LPSは、微生物の一種で、人間が自身の体内では作ることができません。LPSは、体内にある免疫細胞“マクロファージ”を活性化させ、体内に入って来た異物を食べる働きがあり、あらゆる病気の予防に役立つとされています。免疫力を高める効果から、糖尿病や骨粗しょう症の予防・改善、アルツハイマー予防やガンにも効果が見込まれています。
LPSを多く含む食品には、蕎麦をはじめとして、玄米、めかぶ、岩のり、レンコンなどがあります。
(5)ルチン
ルチンは、ポリフェノールの一種で、多くの抗酸化作用、血管を強くしてくれる効果があります。ポリフェノールとは、元来植物自身が紫外線から身を守るための物質で、穀物では蕎麦の実以外に多く含有しているものはありません。
ルチンの一日の必要量は、30~50g程度と言われていますが、蕎麦の実にふくまれるルチン量は、100g当たり10~20mgなので、一日に盛り蕎麦やざる蕎麦一枚140g程度食べれば、必要量がほぼ摂取できる計算となります。
蕎麦の実が持つ効能、美容健康効果
【1】ダイエット効果
蕎麦の実に含まれるタンパク質のレジスタントプロテインは、体内消化酵素では消化されにくく、かつ食物繊維に似た働きを持つタンパク質です。小腸で余分な脂肪やコレステロールを吸収しながら、そのまま排出してくれます。腸内の善玉菌を増加させる働きもあるため、腸内環境の改善、便通改善といった効果が期待されます。
また、食物繊維そのものにも、腸内環境を整え、便秘の解消、老廃物排出といったデトックス効果もあるため、それらの相乗効果で、ダイエットがさらに期待されるという仕組みです。
さらに、蕎麦の実がダイエットフードだとされる大きな理由には、低GI食品で血糖値の上昇が少ないこともあります。穀類のGI値としては、蕎麦の59に対して、白米は84、うどんは80、食パンは91という数値になります。
加えて、「リジン」にもダイエット効果が期待できます。小麦や精白米には、少量しか含まれない必須アミノ酸の「リジン」。リジンには脂肪の燃焼を促進させる働きがあり、ダイエットの効果も抜群とされていますが、蕎麦に豊富に含まれています。
他にも、蕎麦に含まれる「ルチン」には血液循環を良くし、代謝を上げてくれます。また「ナイアシン」には糖質や脂質、アルコール代謝を助ける働きがあります。
これら蕎麦に含まれる多くの栄養素の働きによって、蕎麦の実はダイエット効果が非常に高い食品ということで注目されています。
しかし、カロリー量でみると、白米356 kcalに対して、蕎麦の実364 kcalとカロリーは低くないので、
上手く食事全体のカロリーコントロールは必要です。
【2】アンチエイジング効果
食物繊維が腸内環境を改善、デトックス効果が見込まれます。
また、ポリフェノールの一種の「ルチン」によって、血流改善効果、酸化や老化原因となる活性酸素を取り除く働きが見込まれます。
さらにルチンにはコラーゲン生成に欠かせないビタミンCの働きを助ける効果もあり、野菜などと一緒に摂取すれば、より美肌作りに役立ちます。
【3】ストレス解消効果
蕎麦の実に含まれているパントテン酸には、ホルモン合成を助けたり、疲労回復効果や炎症を抑える効果、栄養代謝を促す効果も期待されています。
栄養代謝が正常に行われることによって、身体は健康維持とストレス耐性につながります。
さらに、ストレスを感じることによって副腎皮質ホルモンが分泌されますが、パントテン酸には、副腎皮質ホルモンの生成を助ける力もあります。
【4】生活習慣病予防
蕎麦の実に含まれる「ルチン」には、血液をサラサラにし、血管に弾力を与え、かつ血圧を下げるといった効果が見込まれています。高血圧や動脈硬化にも効果があり、生活習慣病の予防として役立ちます。
ルチンは水溶性のため、蕎麦を茹でた後の蕎麦湯も大切に摂るようにすると良いでしょう。
ソバを選ぶときに注意したいこと
蕎麦を選ぶ際に知っておきたいこととして、蕎麦は100%そば粉で作られてなくても“蕎麦”と呼べることです。実際に、立ち食いそば屋さんの蕎麦には、そば粉がほとんど使われていないとも言われています。また、市販されている蕎麦製品には、そば粉の含有量がどのくらいといった規定もありません。
健康効果を願って食べるときには、麺に含まれる成分をしっかり調べたり、信頼できる蕎麦屋さんの蕎麦を選ぶようにしたいものです!
また、“十割”や“二八”の表示内容もチェックしたい項目です。
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蕎麦の実の種類、栄養、健康効果まとめ
古くから身近で親しんできた「蕎麦」には、たくさんの健康効果が詰まっていることが分かってきています。世界的には人気のダイエット、健康フードの一つです。
美味しいお蕎麦を食べて、美容にも健康にも役立てられるのは素敵ですね!
中でも大切な栄養素「ルチン」の含有量が断トツである「韃靼ソバ」も日本ソバに加えて個人的に大注目の要チェック食材です!
(By ゼウス23世)