実は世界の各地でミツバチが減少しているという報告があります。これにより養蜂家は大きな打撃を受けていると聞きます。なるほど、はちみつ自体の収穫量が減ってしまって、値段なども高くなったら嫌だな。。と心配していたところ、トンでもない!
実はこの問題、そんなレベルではなく、もっと深くて深刻な問題をはらんでいたのです。世界的な食糧難に突入するかも知れないのです!?
その理由を見ていきましょう。
この記事の目次
CCD(蜂群崩壊症候群)という怖い現象
飼育されているミツバチが突然、大量に姿を消すという原因不明の現象が起こっています。巣箱には孵化した幼虫や食料だけが残され、女王バチと羽化直後の働きバチがわずかに残っていたりする場合も多いのですが、ミツバチの死骸すらまったく巣箱の周囲でも発見されず、ハチが突然いなくなる。という現象です。CCD(colony collapse disorder)と英語では呼ばれています。
2006年秋に米国で問題が発見されてから、カナダや一部のヨーロッパ諸国、インド、台湾、ブラジルなどでも同じ現象が起こりはじめ、まだそのCCDの原因については正確には解明されていないのです。
世界の各地で突然に起こったこのCCDの現象を、マスコミ各社は「世界の食糧供給を御ぼやかす脅威」と報じました。
日本でミツバチを取り巻く状況
はちみつをとるため養蜂されているミツバチは世界に数種類ありますが、日本では主に”セイヨウミツバチ”という種類になります。セイヨウミツバチはただ”はちみつ”を作るだけでなく、いちご、メロンなどの果物栽培の花粉交配という役割をも担っています。
一方、日本での養蜂家の数は年々減っていて、それによりミツバチの数も減ってきています。戦後のピーク時には日本で32万群も飼われていたミツバチですが、今ではその半分程度の数になってしまっています。
CCDでミツバチが消えた原因とは?
まず、CCDの原因はまだ完全に解明されていません。まだ謎のままです。人類よりも早い時代からこの地球上に生れ、厳しい氷河期も生き抜いてきたとされるミツバチ。その消え方まで神秘に包まれています。
今の時点の有力な説としては、
- ダニなどの寄生虫によってミツバチの免疫力が弱められた
- なかでもミツバチヘギイタダニと呼ばれるミツバチに寄生するダニの影響が大?
- 農家たちは害虫駆除のために殺虫剤を積極的に使います。大切な農作物を守るためには仕方がない事だけど、それが自然に飛んでるミツバチにまで影響を及ぼしている
- 特に農地で頻繁に使用されているネオニコチノイド系の農薬の影響が大きい
- ミツバチの生息環境が破壊され、農薬の影響が及ばないような自然環境がどんどん減少している
- さらに、寄生虫や、農薬の問題で弱体化したミツバチに、IAPV(イスラエル急性麻痺(まひ)ウイルス)というウイルス感染症も併発しておこる
といった原因が考えられています。
他にも
- 集中的な人工的な交配を行わせることが、働きバチに過酷なストレスを与えている
- 幼虫が栄養不足になっている
- 彼らの蜜原料の一つに、遺伝子組み換えのトウモロコシなどが使われていること
なども原因ではないかと考えられています。
私たち人間の手による、農業形態の変化、効率化。そして、世界的な温暖化、気候の変化によって、ミツバチ達が好む自然花の種類や数も少なくもなってきているのだろうと思います。
しかしあの厳しい氷河時代をも生き抜いてきたミツバチの生命力。ここ数十年の自然の温暖化などで、ミツバチの免疫力が落ちるとも考えにくい。
やっぱり、化学的な農薬によるダメージが一番大きいのか?と思われるのです。
そんなネオニコチノイド系の農薬が飛んでこないようなミツバチ達のための自然環境が減ってしまったのが問題なのだろうとも思うのです。
これはもう人災ではないでしょうか?ヨーロッパを見習うべきなんじゃないでしょうか?
ヨーロッパでは、そのような自然環境に影響を与える農薬の使用・販売が禁止されている国もあります。この農薬は、ミツバチだけでなく胎児・子どもの発達や脳への悪影響も懸念されている物質だとの報告もあります。
また、CCDミツバチ達の突然死を守るために、ダニ被害については、ダニ遺伝子だけをターゲットにできる駆除方法の研究や、ミツバチの交配をすすめることによって、ダニに対する抵抗性を強めたミツバチを新種として開発する、などといったことも世界では進められています。
ですが、ネオニコチノイド系の農薬問題についてはまだ日本では何の対処も行われてきていません。
ミツバチが減るとどうなるか
実は農作物の35%はミツバチの受粉によって実をつけています。世界の食糧の90%にのぼる100種類以上の作物のうち71種類までがそのミツバチ受粉の恩恵を受けているのです。
また狭い国土を効率よく使って農業を営んでいる日本にとってはそれ以上のミツバチの恩恵を受けています。とくにビニールハウス栽培においては、花粉を運んでくれる自然風や昆虫が居ないので、ミツバチを人為的に使っています。例えばイチゴの交配では、人手で行うのは大変な手間とコストがかかる上、均等に受粉させることが不可能なため、ミツバチ無しではイチゴが作れない。形もとても悪くなってしまうのだそうです。一方ハウスの中で、ミツバチを使うとあっという間に、均等な受粉が終わるのだそうです。
もちろん、イチゴだけでなくリンゴ、オレンジ、イチゴ、玉ねぎ、ニンジンなど、ミツバチはたくさんの作物の花粉媒介の役目を担っています。
ミツバチがいなくなると、農作物の生産に大きな影響がでます!
日本はもちろんですが、ミツバチがいなくなると世界的にも生産力が極端に落ち、果ては世界的な食料危機をも引き起こしてしまう可能性が充分に考えられています。
このミツバチの突然死の問題は、はちみつだけの恩恵だけではないのですね。このような農業全体、食糧危機の問題まではらんでいるので、私たちはもっとこの問題を深刻に考えていかなくてはなりません。
ミツバチが減少、ネオニコチノイドが引き起こす食糧危機まとめ
ネオニコチノイドが大きな原因と考えられる世界のミツバチ現象の問題。
たかがミツバチ、たかが養蜂業を守るとかそんなレベルの話ではないことがお分かりいただけたかと思います。地球上におけるミツバチ生息の歴史は、私たち人類の歴史よりも長いものがあります。
後から生まれてきた人間が、ミツバチの生態系を犯してしまったらとんでもないしっぺ返しが待っているでしょう。早く、元気にミツバチ達が飛び回り、自然の果物、野菜がきちんと獲れる安心な世の中になってもらいたいものです。
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