中鎖脂肪酸とは?覚えておきたいその種類と6つの効果、正しい摂り方など!
ここ数年で改めて注目を集め始めてきた中鎖脂肪酸。中鎖脂肪酸を多く含むオイルに、一躍大ブームを起こしたココナッツオイルがありますが、中鎖脂肪酸は、40年以上もココナッツオイルの以前より、その安全性の高さから医療現場や介護現場で使用されてきた歴史があります。
今回は、中鎖脂肪酸とは?中鎖脂肪酸の効果と効果的な摂取方法についてご紹介したいと思います。
この記事の目次
中鎖脂肪酸とは?
【1】MCT(中鎖脂肪酸油)とは?
地球上には、様々な脂肪酸が存在しますが、この脂肪酸は、炭素の原子が鎖のようにつながってできたものです。中鎖脂肪酸は、ココナッツやパームフルーツなどヤシ科の植物の種子や母乳、牛乳などに含まれる天然成分で、分子に含まれる炭素の鎖の長さが6~8、10~12個程度のものです。近年、大変ブームになっているココナッツオイルの中にも、この中鎖脂肪酸が約55%含有されています。
食生活の偏りや運動不足、睡眠や休養、飲酒や喫煙などの生活習慣の乱れは、糖尿病や高血圧、がんや脳卒中、心疾患など深刻な病気につながります。また、病気ではありませんが、現代では肥満も深刻な問題になっています。肥満とは、脂肪が身体に必要以上に蓄積された状態のことを言います。ここで、注目を集め始めた脂肪酸が“中鎖脂肪酸”でした。中鎖脂肪酸には、摂取しても脂肪として蓄積されにくいという大きな特徴があります。
ココナッツオイルも6割弱の中鎖脂肪酸を含みますが、中鎖脂肪酸100%の油のことをMCT(Medium Chain Triglyceride/中鎖脂肪酸油)といいます。このMCTは、他の一般的なオイルよりも、消化吸収されやすく、素早くエネルギーに変換されやすいという特徴があります。エネルギーを積極的に必要とする未熟児、高脂肪食を必要とする患者さん、消化器系の手術後、油の消化吸収が低下した患者さんなどへの栄養補給時、またスポーツ分野などで栄養補給目的や生活習慣病予防などに効果が期待できるため40年以上前より使用されてきた歴史があります。
【2】中鎖脂肪酸の4つの種類
中鎖脂肪酸の種類についてご紹介します。中鎖脂肪酸は、分子の炭素数によって4種類に分類されています。次に、各名称、炭素数、その特徴についてご紹介します。
名 称 |
炭素数 |
特 徴 |
カプロン酸 |
6個 |
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カプリル酸 |
8個 |
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カプリン酸 |
10個 |
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ラウリン酸 |
12個 |
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※因みに、ココナッツオイルの中鎖脂肪酸の含有割合は、
- ラウリン酸 約42%
- カプリル酸 約7%
- カプリン酸 約5%
- カプロン酸 1%以下
になっています!
中鎖脂肪酸の効果
(1)脂肪燃焼(ダイエット)に効果的
通常、一般的な植物油や肉類の脂のほとんどには、長鎖脂肪酸(分子に含まれる炭素の鎖の長さが12個以上の長いもの)が含まれています。長鎖脂肪酸は、水に溶ける“ミセル”という形で小腸から消化吸収され、リンパ管や静脈を経由して、肝臓や脂肪組織に運ばれます。そして、必要に応じて分解や貯蔵されます。このように、長鎖脂肪酸の油は消費するまでに時間がかかり、体内の他のエネルギー(糖分など)がなくならない限り、消費されることなく脂肪になって身体の中に蓄積されます。
これに対して、中鎖脂肪酸は、水に馴染みやすい性質があるため、長鎖脂肪酸との、消化・吸収の経路が大きく異なります。
中鎖脂肪酸は“ミセル”を形成せずに小腸から門脈を経由して、直接肝臓に運ばれます。油や炭水化物をエネルギーに変換される器官である肝臓に、直接運ばれ分解されるため、短いルートで効率よく分解・消費されていきます。中鎖脂肪酸は、一般的な植物油と比較すると、およそ4~5倍も早く分解され、短時間でエネルギーに変換されます。そして、すぐに消費されるため、身体に蓄積される心配がありません。その上、まわりの脂肪も巻き込んで一緒に燃焼するため、体内脂肪を減らす作用もあり、ダイエットにも適しています。
(2)認知症、うつ病などの精神疾患の予防改善効果
現在、認知症をはじめとした精神疾患が食生活と密接に関係していることが研究から明らかになりつつあります。精神疾患予防に注目される栄養素には、ビタミン、ミネラル、EPAやDHAなどの脂肪酸などがありますが、これらと並び、近年注目され始めているのが中鎖脂肪酸です。
脳はぶどう糖(糖質)を主なエネルギー源にしています。アルツハイマー型の認知症は、脳がエネルギー源として、ぶどう糖を上手に使えなくなることが原因の一つで、脳がエネルギー不足になってしまうことで引き起こります。
脳では、代謝エネルギー源のケトン体がぶどう糖に代わるエネルギーとして使われています。中鎖脂肪酸は、このケトン体に変化しやすい性質があることが分かっており、脳のエネルギー不足を上手く補うことができます。ケトン体が糖質に代わるエネルギーとして脳で利用されると、認知機能を活性する作用があることがわかっています。
(3)糖尿病の予防・改善効果
通常、ぶどう糖が体内からなくなると、その代わりとして脂肪からケトン体を作りますが、中鎖脂肪酸は体内にぶどう糖がある状態でも、ケトン体を合成することができます。肝臓で合成されたケトン体が、ぶどう糖の代わりにエネルギー源になるため、インスリンの分泌を改善し、糖質依存する体質を改善すると言われています。そのため、糖尿病の予防・改善につながります。
また中鎖脂肪酸には、糖尿病や動脈硬化をはじめとした生活習慣病予防効果のあるホルモン“アディポネクチン”を増加させる効果があります。
(4)乳幼児の発育促進効果
乳幼児は、発育のために大量のエネルギーを必要としていますが、消化や吸収能力が未発達です。中鎖脂肪酸は一般の植物オイルと比較して、消化・吸収・代謝が速いため、乳幼児には適した脂肪酸と言えます。中鎖脂肪酸は、身体の成長や食欲を増進させるクレリンというホルモンを活性化させることもわかっています。
(5)高齢者の低栄養改善や運動能力向上、筋肉の維持増強効果
近年、フレイルという身体や心、栄養状態や社会環境に関して、脆弱な状態を示す概念が注目されています。日本老年医学会は、高齢になり筋力や活力が衰えた段階を、フレイルとしています。フレイルは病気になる一歩手前と言われており、生活習慣を変えることによって再び健康を取り戻すことのできる状態です。高齢者は、年齢を重ねるごとに食事の摂取量が減少し、健康に対して気を掛け、食に対して自制することが多くなるため、フレイルの一種である低栄養状態に陥ることがあります。このような場合に、中鎖脂肪酸で低栄養状態を改善する効果があることが分かってきました。
長鎖脂肪酸など、通常の食事に含まれる油を、中鎖脂肪酸を含有した油に替えて日々摂取すると、体重やBMIは増加し、筋肉量が増え、また皮下脂肪や体脂肪を減少させる効果が認められています。このように、毎日の食事に中鎖脂肪酸を取り入れることで、体脂肪が付きにくく、筋肉量の維持や増加が期待できると考えられており、高齢者の歩行など運動能力の向上が期待できます。またアスリートの間でも、筋肉の維持増強という面で特に注目されている脂肪酸です。
(6)疲労回復や持久力の向上効果
最近の研究では、中鎖脂肪酸を毎日の食事に取り入れることで、持久力が向上し、疲労軽減の効果があることが認められました。また、運動後にスタミナ源であるグリコーゲンの蓄積を速めて、疲労回復を高める効果も期待されています。
中鎖脂肪酸の効果的な摂取方法と摂取目安量
1.効果的な摂取方法
中鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸ですので、多くの植物オイル(不飽和脂肪酸)よりは、酸化に対して安定しています。しかし、弱火での加熱は出来ないこともありませんが、150℃以上で加熱すると煙が出て、そのまま加熱し続けると発火する恐れもあるため、高温調理の揚げ物や炒め物には適していません。出来上がった料理にまわしかけるなど、そのまま非加熱の状態で摂取します。MCTは味も香りもほとんどないため、サラダのドレッシングや、出来上がったスープ類にそのままかけても風味を損なわず食べやすいです。
2.摂取目安量
健常者の一日当たりの摂取目安量は、MCTオイルならば、約30ml(270kcal程度)です。一食につきだいたい小さじ1~2杯程度(5~10ml)を目安に摂取します。
3.摂取のタイミング
体脂肪を燃焼させ、ダイエットを目的としたい場合、中鎖脂肪酸の摂取後、空腹を感じるまで糖質を含む食事を控えると、脳は糖がないと感じてケトン体を作り、その後は体脂肪からもケトン体を作り出します。しかし、食事で糖質をたくさん摂取した後だと、中鎖脂肪酸からは、ケトン体は作られず、単にエネルギーとしてのみ使用されてしまいます。
そのため、中鎖脂肪酸摂取のタイミングと糖質摂取のタイミングをずらし、空腹を感じるようにするとダイエット効果が非常に高くなります。
4.気になる副作用は?
稀に嘔吐や吐き気、めまい、眠気などの症状が起き、最悪の場合は昏睡や意識障害を起こし、死亡する場合もあります。これは、糖尿病性ケトアシドーシスという現象で、血液中にケトン体が急増しているにもかかわらず、エネルギーとして使用されずに蓄積されてしまう現象です。糖尿病性ケトアシドーシスは、1型糖尿病患者に多い現象で、中鎖脂肪酸を摂取すると血中のケトン体が上昇したため起こります。糖尿病を患っている方は、中鎖脂肪酸の摂取前には医師への相談が必要です。
他にも、一度にたくさん摂取することで、下痢や胃痛などを起こす場合がありますので、始めて摂取する時は少量から試すことをお勧めします。
中鎖脂肪酸まとめ
どんな種類のオイルでも過剰摂取するとカロリーが高いので、太りやすいというイメージはまだまだ一般的に広がってしまっています。しかし”油”=高カロリー 脂肪を燃焼しやすい中鎖脂肪酸は、今までの常識を変えるオイルのひとつと言っても良さそうですね。
副作用が出る場合もあるようですが、自分の体調を見ながら摂取量を調節し、ダイエットや認知症予防に上手に使用していけたらいいですね。
(By ゼウス23世)