食品の裏側の原材料名のところを見ると、“植物油脂”とか“食用植物油脂”ってよく書いてありますよね。
あの植物油脂の中身は「パーム油」が多く使われていて、健康問題だけじゃなく、熱帯植林の伐採の問題からも、今この「パーム油」の問題が世界的に大きな課題になっています。
今回は、パーム油って何か、ヤシ油との違いは?パーム油の健康問題、栄養成分などをご紹介していきます。
この記事の目次
パーム油とヤシ油の違いとは?
パーム油とは
パーム油(英語: palm oil)は“アブラヤシ”というヤシ課の植物の果実から絞ってできる植物油です。詳しくは、ギニアアブラヤシ(学名 Elaeis guineensis)という植物になります。
このパーム油は、価格もとても安価で、クッキー、チョコレートなどのお菓子、アイスクリーム、そして一般調理用の油となるほかにも、マーガリン、ショートニング、石鹸などの原料としても実に多くの形で利用されてきています。
2010年の時点で、世界で最も生産量の多い植物油になっています。
ヤシ油とは
ヤシ油(英語:Coconut oil)とは“ココヤシ”または“ココナッツヤシ”から絞られる油脂で、いわゆる「ココナッツオイル」になります。ココヤシというアブラヤシとは違う植物の実の果肉から絞られます。
もう一つ、パーム油と紛らわしいものに、「パーム核油」というものもありますが、これはパーム油と同じ“アブラヤシ”の種子から獲る油で、パーム油とは搾る場所が違うので、若干その特性や組成も違っています。英語では、Palm kernel oilと表現されます。
同じヤシの仲間でも栄養価はぜんぜん違う!
<パーム油とヤシ油の栄養価比較>
100gあたり栄養価(3.53oz) |
パーム油 |
ヤシ油(ココナッツオイル) |
|
---|---|---|---|
エネルギー |
884 Kcal |
862 Kcal |
|
水分 |
0 |
0 |
|
灰分 |
0 |
0 |
|
炭水化物 |
0 |
0 |
|
|
(糖分) |
- |
- |
食物繊維 |
0 |
0 |
|
タンパク質 |
0 |
0 |
|
脂質 |
100g |
100g |
|
不飽和
|
オメガ3脂肪酸 |
200㎎ |
– |
オメガ6脂肪酸 |
9.1g |
1.8g |
|
一価不飽和脂肪酸 |
37.0g |
5.8g |
|
飽和脂肪酸 |
49.3g |
86.5g |
|
ビタミン
|
ビタミンA |
– |
– |
ビタミンC |
– |
– |
|
ビタミンE |
15.9㎎ |
0.1㎎ |
|
ビタミンK |
8.0μg |
0.5μg |
|
ビタミンB1(チアミン) |
– |
– |
|
ビタミンB2(リボフラビン) |
– |
– |
|
ビタミンB3(ナイアシン) |
– |
– |
|
ビタミンB6 |
– |
– |
|
葉酸 |
– |
– |
|
パンテトン酸 |
– |
– |
|
コリン |
0.3mg |
0.3㎎ |
|
ベタイン |
– |
– |
|
ミ ネ ラ ル
|
カルシウム |
– |
– |
鉄分 |
– |
– |
|
マグネシウム |
– |
– |
|
リン |
– |
– |
|
カリウム |
– |
– |
|
マンガン |
– |
– |
|
ナトリウム |
– |
– |
|
亜鉛 |
– |
– |
|
銅 |
– |
– |
|
セレン |
– |
– |
栄養価の違い、特長
【1】カロリー
すべての油脂と同じように、パーム油やヤシ油のカロリーも高いです。テーブルスプーン1杯のヤシ油が「117カロリー」を有しているのに対し、パーム油では「120カロリー」。若干パーム油の方がカロリーは高くなっています。
【2】脂肪酸量
脂肪酸量はほぼ同じ量の100gあたりパーム油が”95.6g”、ヤシ油が”94.1g”
ですが、その脂肪酸の内訳が大きく違います!
ヤシ油には「90%以上」の飽和脂肪酸が含まれているのに対し、パーム油の飽和脂肪酸は「約52%」、そしてパーム油には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がそれぞれ均等に1:1の割合で含まれています。
米国心臓病協会によると、高コレステロール値と心血管の病気を防ぐために、飽和脂肪酸の摂取を最少限にすることが勧告されています。
【3】微量栄養素
パーム油には、抗酸化剤として働くビタミンEが多く含まれています。アルファトコフェノールと呼ばれるビタミンEが2.1㎎含まれています。
また、パーム油にはビタミンKも多く含まれています。タンパク質や、炭水化物はまったく含んでいません。
パーム油の世界的な問題とは?
増え続ける生産量
パーム油は世界的に一番生産されている食用油です。2010年には年間5000万トンが生産されました。
とくに、中国、インド、インドネシアでは食用としての需要が急速に伸びています。また、その生産量の半分は加工用、パーソナルケア商品、クリーニング製品などの工業用としても使われています。
アブラヤシは、世界でもっとも効率的に油が採れる作物とされています。
土地1ヘクタールあたり、大豆油が年間わずかに0.38トン、ヒマワリ油で0.48トン、そして菜種(キャノーラ)油で0.67トン生産することができますが、パーム油だと同じ面積で3.7トン、実に大豆油の10倍の生産効率があるのです。
また、アジア地域との貿易格差解消のために、先進国はどんどんとこのパーム油原料の購入をアジアの国から進めています。
実は、このままのペースでいけば熱帯雨林地域の伐採が続き、2022年にはボルネオ島の雨林地域が消滅?するとも言われているのです。
このため、野生のオラウータンの少なくとも半分が、この20年間で消滅してしまったとも言われています。オラウータン生息地の80%が、このアブラヤシの生産増量のために、破壊され続けているのです。
パーム油を生産プロセス
アブラヤシの実を滅菌消毒するために、パーム油の工場では、高圧蒸気による加熱、加圧処理がなされています。
また、通常のパーム油では色が悪く、脱色剤の使用も大々的に行われています。食用としては、精製度も高く処理されています。
これらにより天然に含まれる栄養素などが壊れ、また水素添加などの処理によってトランス脂肪酸も生まれています。(ヤシ油と違って不飽和脂肪酸も50%含まれているため)
家庭ではあまり見ないが・・
パーム油は家庭では見ないが、商業的には多く使われています。
パーム油は、精製度合いも強く、品質も安定していて価格が何といっても安いため多くの外食産業、食品加工業界の原材料として使われています。
ですので、家庭では使わないけど、知らず知らずの間に摂らされている油の代表格だともいえると思います。
“植物油脂”と書かれた裏にキャノーラ油とともに、大きく存在している油になります。
ヤシ油のように安全な油はないものか?
ヤシ油(ココナッツオイル)は、安全性が重視された商品です。原料のオーガニック生産、搾油もコールドプレスといった安心の製品が多く出てきています。
パーム油にも、レッドパーム油という丁寧に精製したパーム油も一部売られていますが、多くの問題はこの工業的に大規模精製されたパーム油です。
パーム油とヤシ油の違い、まとめ
よくパーム油はココナッツオイルと同じなのか?という印象を持たれていると思います。
ですが、ヤシ油がココナッツオイルであり、パーム油とは成分も特徴もまったく違うものです。
植物油脂の中では、飽和脂肪酸の含有率も50%と、比較的安定はしていてトランス脂肪酸の問題も少ないイメージもありますが、実はそうでもなく、世界的には品質問題、環境問題が大きな油であるという認識をもっていただければ幸いです。
しかし、この問題は、消費者による不買運動くらいでは解決には至りそうになく、困った植物油の問題だと感じますネ。
(By ゼウス23世)