トランス脂肪酸の表示規制!日本は野放し、アメリカ諸外国は素早い対応‼
食品に含まれているトランス脂肪酸がとても怖い存在であることはもうご存知ですよね。
世界の中で、日本はトランス脂肪酸対応の「後進国」だと言われはじめています。それは、世界の多くの国でトランス脂肪酸に対する表示義務や量の規制が始まっていますが、日本ではまだそういった規制が始まっていないからです。
食品表示すらしなくてもよい状況です。
私たち日本の国民に対してまったく野放しの状態で、危険かもわかりません。
各国にくらべてどれくらい遅れているのか、またなぜ日本では野放しなのか、などをみていきましょう!
この記事の目次
トランス脂肪酸大国のアメリカもついに2018年から原則禁止化へ!
2015年6月アメリカの食品医薬品局(FDA)は、2018年以降、トランス脂肪酸を食品に添加することを原則禁止にすることを発表しました。トランス脂肪酸の研究については、もともとヨーロッパも進んでいて、中でもオランダによるトランス脂肪酸に対する研究が引き金となって、世界的にトランス脂肪酸の危険性に関する認識が高まったと言われています。
アメリカではすでに、すべての加工食品にたいしてトランス脂肪酸の含有量をふくむ「栄養成分の表示」を義務付けています。そして今回の発表ではさらに、すべての食品に対して2018年からトランス脂肪酸を「全面撤廃」させるという措置を加えたのです。
加工食品の世界最大の工業国かつ消費地であるアメリカがこの規制をかけたことで、さらにこのトランス脂肪酸への規制の動きが世界的にひろがるのではないかと思われます。この問題は、食品業界ではたらく人たちだけでなく、直接影響をうける私たち消費者が知っておくべき事実だと思われます。
世界各国のトランス脂肪酸規制
日本の現状について触れる前に、アメリカ以外の国での対応状況を見てみます。
【1】カナダ
カナダは心臓病患者が多い国ですので、トランス脂肪酸にたいしては初期の頃から厳しい対応をとってきています。加工食品のパッケージに、トランス脂肪酸の表示を2005年に義務付けしました。また、食品のトランス脂肪酸の含有量にもきちんと制限をかけています。
【2】デンマーク
デンマークは世界の先駆けで、国内に流通するすべての加工食品に対し、油脂100 gあたりのトランス脂肪酸が2gを越えてはならないという規制を開始しました。逆に1g未満の場合は、トランス脂肪酸フリーとパッケージに書いても良いことになっています。
【3】シンガポール
食用の油脂には、2%をこえるトランス脂肪酸を含んではならないとしています。食用油脂のパッケージにはトランス脂肪酸を含み、栄養成分表示をしっかりとしないといけないことになっています。
【4】韓国
お隣の国韓国も、食品の中に含まれるトランス脂肪酸の量を表記することを義務付けしています。中国、台湾、香港も同じように義務化されていますが、それぞれ表示の基準は違います。
【5】オーストリア
人工的なトランス脂肪酸の量を100 g あたり2g以上含んだ油脂製品の国内流通を禁止しました。加工食品は 100 gあたりのトランス脂肪酸の最大含有量を4%として上限をもうけています。
【6】スイス
デンマークやオーストリアと同じく食用の植物油脂100 gあたり2gを超えてはいけないと規制をかけてました。スイスはデンマークに次いで、世界に2番目に規制を掛けた国です。
【7】フランス
総エネルギー摂取量の中にトランス脂肪酸の摂取を2%以内にすることを推奨しています。(義務化ではない)食品メーカーへも自主的な低減を呼びかけるなどしていますので、日本と対応は似ているかも?という状況です。
【8】その他
EUの中では8カ国が現時点で規制をかけています(一部食品のみを対象としたものを含む)。EUやアメリカ、カナダ以外でも、中国、エクアドル、香港、イスラエル、ジャマイカ、マレーシア、メキシコ、パラグアイ、台湾、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、中東湾岸諸国、インド、プエリトルコ、南アフリカにおいてすでに何からの規制、もしくは最終法案待ちといった状況です。
遂に動き出したEU連合
2011年9月にパッケージ食品に栄養表示を義務化する法案がEUの欧州連合理事会で決まりました。その時、トランス脂肪酸については禁止することによって、EU全体で受ける経済影響などを調査した上で、決定するとなっていたのですが、その最終レポートがまとめられ、2015年12月に正式に提出されました。
これを受け、欧州委員会は「各食品とEU諸国民の食事に含まれるトランス脂肪酸」に関する報告書というレポートを採択し、今後より具体的な議論・検討をすすめるために動き出したわけです。
このように世界的に動きはじめた中、日本だけが本当に取り残される可能性が高くなってきたと言えるのではないでしょうか?
日本の表示義務、規制について
日本においては、まだ植物油脂および加工食品におけるトランス脂肪酸の表示義務も、基準設定も何もありません。
厚生労働省のArai Tsuyoshi 氏はJapan Timesのインタビューでこう答えています。
「平均的な日本人のトランス脂肪酸の摂取レベルは、総消費カロリーの1パーセントまたは1日あたり2グラム未満というWHOで設定された摂取基準よりも下回っており安全レベルです」
「現在の日本人の食生活において、トランス脂肪酸による健康への影響は非常に小さいと考えています。日本では、まだ特定の摂取制限を設定する予定はありません。」
これと同じ内容が、厚生労働省のHPにも同様の内容が記載されています。
「日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、国際基準より低いから大丈夫」というのが日本の国としてオフィシャルな見解ということなのです。
■ 本当に安全なのでしょうか?
日本人の平均摂取量は、消費カロリーのわずか0.3%。この数字だけ見ると確かに国際基準の1%を大きく下回っているように見えます。
しかし、気になる報告書もあります。日本の1歳~6歳の子供のトランス脂肪酸の摂取量が平均で、男の子で0.47%、女の子で0.46%と報告されています。全体の平均よりも高い数字になっています。
しかも共稼ぎで惣菜などによる食材に頼らざるを得ない家庭では、これよりもっと大きな数字になっていることが懸念もされています。つまり、一部には1%に近いまたはそれ以上の子供も含まれている可能性があるということです。
しかも、日本全体で食の欧米化が年々進んでいる中、トランス脂肪酸の摂取量も気づかないうちに今後も増え続けているという懸念はないのでしょうか?
■ 食品メーカーからの圧力もありそうだ・・
食品表示を担当している日本の消費者庁は、食品メーカーにトランス脂肪酸の表示義務を課す必要はないと述べているようです。食品メーカーに義務を課すことで、かえってその分析コストがかかって、最終的には、製品価格にはね返ってしまうのが理由のようです。(Japan Times)
一方で、北米や東南アジアで売られている日本のチョコレート製品には、トランス脂肪酸の含有量がしっかりとパッケージに表示されて売られているので、大手メーカーでは、すでに海外用トランス脂肪酸の計測は行っている、という指摘もあります。ちなみにその日本のチョコレート製品は、パッケージあたり1日基準を超える3.0 gのトランス脂肪酸が含まれています(怖)。
■ 摂取量が少ないのは言い訳にならない!?
また、トランス脂肪酸の規制をすでに行っている中国や、韓国においてのトランス脂肪酸の平均摂取量は、日本の対カロリー基準の0.3%よりも低いと報告されています。そんな低い数字であるにもかかわらず、表示義務化を実行しています。
国民の健康被害を最小化するために、危険である可能性があることははやく国民に対して告知くらいはしても良いのではないか、と憤りを感じるのは私だけでしょうか・・
知っておきたいトランス脂肪酸のこと
あらためて、トランス脂肪酸のおさらいをしておきましょう!実はトランス脂肪酸には、自然由来のものと、人工的に作られるものと2種類が存在します。
【1】自然由来のトランス脂肪酸とは
反芻(はんすう)動物といって食べ物をくちゃくちゃ胃と口の中で、何度も出し入れして食べる”牛”や”ヤギ”のことをはんすう動物と言いますが、このはんすう動物の肉や乳(ミルク)にもトランス脂肪酸が含まれています。
しかし、この牛肉や乳製品に含まれるトランス脂肪酸に関しては、私たちのカラダに与える健康被害がまだ報告されていないので、同じトランス脂肪酸といっても、まだ安全なものとみなされています。
【2】危険なものは”人工的な”トランス脂肪酸!
液体の植物油を人工的に固形化するときに、トランス脂肪酸が発生します。植物油を固形化してつくる食品の代表が、マーガリンやショートニングです。これらは外に置いておいても、虫がいっさい寄り付かないほど人工的なプラスチック食品とも言われています。マーガリンやショートニング以外にもコーヒーフレッシュなども植物油を人工的に”半固形化”したものになります。
また、サラダ油やキャノーラ油などの食用油を精製する過程でもトランス脂肪酸が発生します。植物油に、高温で圧力をかけたり、脱臭、脱色などの過程でトランス脂肪酸が発生してしまいます。
世界的に危険性がさけばれているのは、この人工的に作られたトランス脂肪酸です!
人工的なトランス脂肪酸が多く含まれる食品は?
【1】マーガリン、ショートニング、コーヒーフレッシュ
液体の植物油を人工的に固形化したのが「マーガリン」、半固形化したものが「ショートニング」。そして固形化したものをさらに水に溶かしたのが「コーヒーフレッシュ」です。これらの製品には、トランス脂肪酸が含まれています。
【2】高温で処理されてつくられる植物油
これらの油は、植物から高温圧力をかけて作られる油。その精製の過程でトランス脂肪酸が発生します。
【3】カレールー
カレールーは精製された油脂が多く使われています。
【4】菓子パン、クッキー
菓子パンやクッキーは、マーガリンやショートニングが使われています。とくにショートニングはクリーム状の油脂で、洋菓子やパンがサクサクな食感に仕上がるためによく使われます。またパン生地に油を練り込んで焼かれる商品もあるので、その食用油にもトランス脂肪酸が含まれている可能性があります。実際に、ヤマザキパンなどはトランス脂肪酸の削減化にとりくんでいます。
【5】惣菜、コンビニ弁当
サラダ油やキャノーラ油など、精製された食用油が多く使われています。また揚げ物には、繰り返し加熱された油でつくられている可能性がありますので、トランス脂肪酸以外の酸化化合物も含まれている可能性があります。また、コンビニ弁当には食品添加物、防腐剤も入っているのは有名な話しですよね。
【6】意外なところでハヤシルーやクロワッサン
精製された油を使って固形化されたものはカレールーだけではありません。ハヤシルー、もしかしたらクリームシチューのルーなども水素添加など日保ちがするように加工された精製油が使われています。意外なところで、クロワッサンも油を練り込んでつくられています。
こちらの記事も参考にしてください。
▶ 【ランキング】マーガリンだけじゃなかった!トランス脂肪酸が多い食品とは?
▶ 農林水産省/トランス脂肪酸に関する情報
トランス脂肪酸による健康被害とは?
トランス脂肪酸は、過剰摂取することで動脈硬化や心筋梗塞が発生するリスクを高めると言われています。トランス脂肪酸の過剰な摂取によって、血中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすという働きがおこります。その結果、動脈硬化や心筋梗塞などが引き起こされるリスクが高まります。
アメリカで今回、トランス脂肪酸の使用の禁止を決定した食品医薬品局(FDA)はトランス脂肪酸の禁止によって年間7000人規模の心臓病で亡くなる人が減少し、心筋梗塞を含む心臓疾患の患者数にいたっては年間2万人も減少するという予測をしています。いち早くトランス脂肪酸の規制を行ったデンマークでも実際の患者数の改善が見られたと報告されています。
また、トランス脂肪酸は他にもアレルギー症状の悪化や気管支炎などの炎症への悪影響など様々な問題があることが知られています。
■トランス脂肪酸は赤ちゃんにも危険!
トランス脂肪酸の危険性は自分の体だけにとどまりません。妊娠中の場合、流産や死産の可能性を高めてしまったり、乳児がいる場合は母乳を介してトランス脂肪酸が乳児の口に入っていく可能性がありますので、妊婦さんや母乳をあげているママさんはとくに注意が必要です。
トランス脂肪酸はわずか60年の問題です!
マーガリンやショートニングが日本で生まれて何年になるのでしょうか? 雪印乳業がつくったネオマーガリンの誕生が、1954年(昭和29年)と今から60年前です。精製された食用油がつくられはじめたのは、それよりも以前だと思いますが、やはりこのようなトランス脂肪酸を含んだ工業化された食品が生まれてきたのはわずか60年前のことです。
この60年の間に、世界的にも心臓疾患、アルツハイマーなど脳疾患、そして現代病と呼ばれるメタボリックシンドローム、糖尿病といったものまで同じく増えてきました。
個人的な推測も含まれますが、トランス脂肪酸を含んだ食品の摂取がこれら現代に増えてきた病気とまったく関係性がゼロだとは考えにくい気がしてなりません。
トランス脂肪酸の表示義務まとめ
トランス脂肪酸の表示義務や使用規制について、諸外国の対応状況を知って驚かれた方も多いのではないでしょうか?
日本はトランス脂肪酸の摂取が諸外国にくらべて低いという調査結果に関しても、これだけ加工食品があふれている現代の日本において、本当にそうなのでしょうか?と疑問が残ります。
またコンビニが一番多いのも日本です。コンビニの鮭おにぎりや弁当にも、食用植物油という記載があり、この油にトランス脂肪酸が含まれていることは間違いありません。
トランス脂肪酸の危険性については、世界的な調査がさらにすすむと思います。そうなれば、思いコシをもったように見える日本の政府、食品メーカーにも改革が及ぶようになると思います。
はやくそうなって欲しいと願うばかりです。
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(By ゼウス23世)