ハイオレイックとハイリノールの意味とは?身体に悪い油、避けたい油
ハイオレイック、ハイリノールという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これらは植物油に用いる原材料の品種の名前です。では、どのような植物油にこのような原料品種が存在するのでしょうか?また、なぜこのような品種が生まれたのでしょうか?
これらはカラダにとって良い改良なのでしょうか?それとも悪いもの?
という疑問もわいてくると思います。
今回は、
- ハイオレイックとハイリノールの意味とは?
- ハイオレイックオイルとは
- 身体に悪い油と、避けたい油6選
などについてご紹介していきたいと思います。
この記事の目次
ハイオレイックとハイリノールの意味とは何か?
【1】リノール酸の身体への影響
ハイオレイックとハイリノールの誕生には、リノール酸の過去の扱い、身体への影響が大きく関係しています。
リノール酸(多可不飽和脂肪酸のオメガ6系脂肪酸)は、1960~1980年代ごろには健康にとても良い成分でかつ、カラダの中で作ることのできない必須脂肪酸であるという理由から、リノール酸の摂取をかつてはとても大々的に推奨されてきた脂肪酸成分です。
中でも、そのリノール酸を80%以上含有していた当時の紅花油(サフラワー油)などは人気が高く、贈答品としての需要も多い人気オイルでした。
しかし、その後の研究でリノール酸による健康影響の検証が進められ、1990年代ごろからきっぱりと『リノール酸の過剰摂取は控えるべき』という今までの逆の認識が一気に広まりました。
リノール酸の過剰摂取は、免疫細胞の働きを弱め、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性炎症疾患を引き起こしたり、動脈硬化や心疾患など、重大な病気を引き起こす可能性につながるという事実が明らかになってきたからです。
【2】ハイオレイックとハイリノール
こうしたリノール酸による健康被害の背景があり、登場してきたのが『ハイオレイック種』という改良品種でした。ハイオレイック種とは、オレイン酸(一価不飽和脂肪酸のオメガ9系脂肪酸)の含有割合を高めた紅花オイルやヒマワリオイルの原料種子を指します。
同原料種子から搾油するオイルは、リノール酸の含有率に比較し、オレイン酸の含有率が高いものへと改良されています。。
- 従来のリノール酸含有が高い種類 ⇒ ハイリノール
- オレイン酸含有が高い改良種類 ⇒ ハイオレイック
と文字通り区別ができます。
そして、市場に出回る紅花油などのオイルは現在ハイリノールの製品とハイオレイックの2種類が混在して売られています。
ハイオレイック、ハイリノールについては日本農林規格(JAS規格)の食用植物油脂の表示法(品質に関する表示法)によって、
- ハイリノール種の種子から採取したオイルは『ハイリノール』
- ハイオレイック種の種子から採取したオイルは『ハイオレイック』
- 両者を併用したオイルでは、原材料が占める割合の多い方からハイリノール、ハイオレイック
と名称の横に括弧書きで表記することができます。しかしながら、この記入は任意で、原則とされているわけではないのです。
【3】ハイオレイック種で作られているオイルと脂肪酸組成比率
紅花油(サフラワー油)、ヒマワリ油などには、品種改良によってハイオレイックタイプが主流となっています。ハイオレイックタイプとハイリノールタイプのそれぞれのオイルの脂肪酸組成比率は、大きく変化していて、リノール酸とオレイン酸の割合が真逆になっているか、それ以上の割合へと変化しています。
脂の種類 |
リノール酸割合(%) |
オレイン酸割合(%) |
|
紅花油 |
ハイリノール |
73.0 |
16.8 |
ハイオレイック |
13.7 |
78.1 |
|
ヒマワリ油 |
ハイリノール |
57.6 |
30.8 |
ハイオレイック |
7.8 |
83.7 |
参照資料:公益財団法人 日本油脂検査協会 平成26年食用植物油脂の脂肪酸組成結果等
身体に悪い油とリノール酸含有比率の高い避けたい油
(1)酸化した油
古くなった油は、他の食品と同様に身体に非常に悪いと言われています。油は、見た目のみでは判断するのが難しいですが、賞味期限が近ければ自然と腐敗(酸化)も進んでいます。
酸化が進んだオイルの見極め方法は、味の違い変化と不快な臭いです。油の酸化は、空気(酸素)・光などに触れることで常温でも進みますが、揚げ物などの加熱調理で一気に進んでいくことが、ひとつの特徴です。油の酸化速度は、含まれる脂肪酸の種類によって異なります。中でも、オメガ3系の脂肪酸や、リノール酸は、とても酸化が早いと言われています。
酸化した油を摂取すると、下痢などを起こしやすくなり、継続して摂取することで、老化の原因となったり、脂肪肝、肝臓がんなどの原因となることが分かっています。
(2)トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、“食べるプラスチック”“狂った油”などと言われ、アメリカでは、水素添加した植物油からトランス脂肪酸が生成されてしまうことから、2018年6月に全廃することを決定しました。他にも、ヨーロッパやアジア圏でも、かなり以前より使用規制や表示義務などが設けられていますが、今のところ残念ながら日本にはこのような取り決めはありません。
トランス脂肪酸は、自然界には存在しない油で、人間には代謝することのできない成分です。トランス脂肪酸を日常的に摂取し続けていると、動脈硬化や心臓病、ガンなどになる可能性が上がったり、認知症の発症、慢性疲労の原因となったりします。
トランス脂肪酸は、市販の菓子類やパン、ケーキ、カレールー、マヨネーズ、インスタント食品やレトルト食品など身近にあるものに含まれています。トランス脂肪酸の代表と言えば、マーガリンやショートニング、ファットスプレッド、植物油脂(高温処理や薬剤処理のされているもの)や加工油脂などです。上記の食品には、マーガリンやショートニングをはじめとするトランス脂肪酸をたくさん含む油脂がたくさん使用されています。
(3)リノール酸含有比率の高い避けたい油
リノール酸は、摂りすぎることで、アレルギーの原因となったり、HDL(善玉)コレステロールの減少とLDL(悪玉)コレステロールによる動脈硬化などの生活習慣病やがん、うつ病や認知症、ADHDなどの様々な病気の原因となります。そのため、酸化した油やトランス脂肪酸などに次いで摂りすぎには注意したい油です。リノール酸は体では合成できない必須脂肪酸の一種で、身体には無くてはなりませんが、米、野菜、植物油を使用した加工食品など、多くの食品に含まれていますので、積極的に摂取しなくても自然と必要量を摂取することのできる脂肪酸です。
次に、リノール酸含有比率の高い順に油をご紹介します。下に行くほど、リノール酸含有量が少なく安心して摂取できる油ということになります。
◎ 油脂別 リノール酸含有量 成分100gあたりの含有量(mg)
|
油脂名 |
|
成分量 100gあたりmg |
1 |
サフラワー油 ハイリノール |
リノール酸含有量が多く 避けたい油
リノール酸含有量が少なく 安心して摂取できる油 |
70,000 |
2 |
ぶどう油 |
63,000 |
|
3 |
ひまわり油 ハイリノール |
58,000 |
|
4 |
綿実油 |
54,000 |
|
5 |
とうもろこし油 |
51,000 |
|
6 |
大豆油 |
50,000 |
|
7 |
ラー油 |
43,000 |
|
8 |
ごま油 |
41,000 |
|
9 |
調合油 |
34,000 |
|
10 |
米ぬか油 |
32,000 |
|
11 |
落花生油 |
29,000 |
|
12 |
ひまわり油 ミッドオレイック |
28,000 |
|
13 |
なたね油 |
19,000 |
|
14 |
ファットスプレッド |
18,000 |
|
15 |
あまに油 |
14,000 |
|
16 |
サフラワー油 ハイオレイック |
13,000 |
|
17 |
ソフトタイプマーガリン |
12,000 |
|
17 |
えごま油 |
12,000 |
|
17 |
ショートニング 業務用 フライ |
12,000 |
|
20 |
ショートニング 家庭用 |
11,000 |
|
21 |
パーム油 |
9,000 |
|
22 |
ラード |
8,900 |
|
23 |
ソフトタイプマーガリン 業務用 |
8,100 |
|
24 |
ショートニング 業務用 製菓 |
7,800 |
|
25 |
ひまわり油 ハイオレイック |
6,600 |
|
25 |
オリーブ油 |
6,600 |
データ引用元:文部科学省 食品データベース(https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html)
(4)遺伝子組み換え原料を使用している油
現在、市販されている安価な植物油の多くは、国内原料ではなく外国産原料を使用している場合も多く、遺伝子組み換え原材料を使用している可能性のある製品が多く出回っています。原材料表示に、原材料の産地や非遺伝子組み換え原料の有無などが表示されていますので、確認してから購入することが望ましいです。
(5)プラスチックボトルや缶ボトルに入っている油
油に使われるプラスチックボトルや缶ボトルには、BPA(ビスフェノールA)という環境ホルモンの一種が含まれるものがあります。このBPAは、女性ホルモンのエストロゲンに良く似た働きがあり、乳がんの原因物質の一つとも考えられています。
BPAは油に溶ける性質があり、プラスチックボトルに溶けだしている可能性があります。
日本の製品には、プラスチックボトルや缶ボトルが使用されている製品が多いですが、BPAをボトルに使用しているか否かを表記してあるものは少数です。BPA不使用の表記のあるものか、ガラスボトルを使用しているものが、より安心して油を摂取することができるでしょう。
(6)偽物の加工油
健康をうたっているオリーブオイルには、粗悪な油を混ぜた偽物が多いことをよく耳にします。イタリア産のオリーブオイルの8割が偽物という噂もあり、もしそれが本当ならば大変なことです。
専門家にも見分けがつかない偽商品もあるそうです。オリーブオイルを選ぶときは、必ず、遮光ビンを使用した、商品劣化に対して気を使っているもの、また低温圧搾製法で作られているもの、価格帯も安すぎないものを選択し、あとはオリーブの栽培・収穫・製造工程に至るまで信頼できる生産者を購入者が見極める必要があります。
ハイオレイックとハイリノールの意味、避けたい油まとめ
リノール酸の健康への悪影響のために、品種改良によって生み出されたハイオレイック種のオイル、市場は従来のハイリノールタイプからだんだんとハイオレイックタイプの製品にシフトしてきています。
“油を変えれば体が変わる”と言われるほど、身体の健康に影響力のある油。原材料も良く、とても健康的と言われる油でも、製造方法や保管方法、保存容器の種類、調理方法などを間違えてしまうとによって、健康に悪影響の出る油に変化してしまうことを是非覚えていてほしいと思います。、油は、購入して安心せずに、購入後も注意しながら使う必要がありますね。
関連記事
▶ 植物油脂の表示の意味とは?知っておきたい食品表示のこと!
▶ 植物油脂って何?動物油脂との違いは?その特徴は?
▶ オメガ9系オイルの効果って?欠乏すると?目標摂取量とは?
▶ 必須脂肪酸5つとその効果とは?含有量が多い食品食べ物各10選!
(By ゼウス23世)